Archi Review 第10回
ジャン・ヌーベル「カルチィエ財団ビル」
2003年12月14日 井戸健治
1、カルチィエビル
庭園の設計はアーティスト ローター・バウムガルデン「植物の劇場」。シャトーブリアンが住んでいた、レバノン杉は彼が植えたもの。建物から衝立が伸びていることにより、後ろの風景や空が透けるのと同時に反射するガラス面が建築のヴォリュームの存在感が消える。
2、ジャン・ヌーベルの空間の特徴
・光と闇の空間→黒とシルバー反射、赤・青・黄色(金色)の光。
・形態→コンテクストを読んだ既存の形態をとる場合と、異形を挿入する場合と、ガラス(イメージをまとわせた)箱の場合、ぬめり(角がRになっている)。はねだし、庇、衝立による「空あるいは不在の建築」の部分を作る→建築の境界を曖昧にすることで、ユークリッド空間(モダニズム建築の特質)を消去していく。
・イメージ→イメージのレイヤーを重ねる
・フラクタル/グリッド→同じグリッドの繰り返し。細部までフラクタルな形態で構成される空間。
・素材→材料がメタル・鉄のルーバー
・2項対立ではなく→建物と自然、機会美と自然、伝統と現代、(既存の建物へのガラスの箱のコラージュ)
・モノリス→同じ素材で建築を包みオブジェ化する。
3、J・Nの設計思想
「フォルムと空間」から「物質と光」へ「光であらわになる空間」から「イメージで曖昧になる空間の奥行き、フォルムではない空間、透明性も透過が重要ではなく、空気の厚み、知覚の問題、空間認識の問題。
古いものと新しいものを出会わせることに興味がある。過去と現代を互いに尊重しあう。
「楽しさ」個別解へのパラメーター→イデオロギー的(コルビジュエ)でもなく、時代精神(ミース)を反映するのでもない。個別解としてそのとき考えうる最高に知的な解をだすこと。モダニズムや社会主義のように、社会はこうあるべき人間はこうあるべきというようなものではない。
感覚的・情動的なものと理性的なものとの同居。
クロード・パラン→「斜めの機能」、「スペースの連続」
ポール・ヴィリリオ→トーチカの形態、情報化された社会での建築とは?
4、コルビジュエ・ミース
コルビジュエ→「ユニテ・ダビタシオン」のテラス、「ロンシャンの教会」の窓の色使いを継承?
ミースの「ガラスのスカイスクレイパー」の立面ドローングと「国立第二劇場」の立面、都市に対する異物と表面の様態
    「バルセロナ・パビリオン」の光の反射→「カルチェ財団ビル」へ
    「バルセロナ・パビリオン」のキャンチレバーの庇、コンサートホール案の庇→ルツェルンのホールへ
    「新国立ギャラリー」→ナントの裁判所へ
フーゴ・へーリング「フリードリッヒ・シュトラッセのオフィスビル」→「ギャラリー・ラファイエット」
4、コルビジュエ・ミース
コルビジュエ→「ユニテ・ダビタシオン」のテラス、「ロンシャンの教会」の窓の色使いを継承?
ミースの「ガラスのスカイスクレイパー」の立面ドローングと「国立第二劇場」の立面、都市に対する異物と表面の様態
    「バルセロナ・パビリオン」の光の反射→「カルチェ財団ビル」へ
    「バルセロナ・パビリオン」のキャンチレバーの庇、コンサートホール案の庇→ルツェルンのホールへ
    「新国立ギャラリー」→ナントの裁判所へ
フーゴ・へーリング「フリードリッヒ・シュトラッセのオフィスビル」→「ギャラリー・ラファイエット」
5、現代アートとの関係
・ダン・グラハム
→コンセプチュアルアートの代表的存在、詩や雑誌上での作品から出発し、ビデオを利用した時間差や視差に関する作品へ、そして、建築に近い作品(パビリオン)へと移行。デュシャンの「泉」は、美術館という場所に外部のものが展示されることによって、芸術になるという制度批判。しかし、その行為自体が芸術として、既存の制度の中に回収されてしまった。ドナルド・ジャッドなどのミニマリズムは空間での作品の配置も重要な要素。美術館・ギャラリーという「支持」に支えられた芸術である。もとギャラリストであった経験から、芸術が、美術館(展示する場所)と雑誌(芸術批評とギャラリーの広告収入で成り立つ)と購入者のシステムの中に発生しているという事をあぶり出す作品から出発。
「郊外住宅の改変」1978年、「アーゴンの為のパビリオン」1978年、「ニューヨーク、ディア・センターの為の屋上公園プロジェクト」1981年、「カフェ・ブラヴォー」1998年
→鑑賞者の身体が作品に映り込むことで、作品鑑賞時に消失する「自信」の逆転
・ダン・フレヴィン→ギャラリーの中立的要素で作品を本来はひきたてる構成要素の照明器具が作品とて存在させる。空間が主ではなく構成要素、光、装置が主になる。
・コンスタント「ニューバビロン」
・ソル・ルウィット
・ピカビア→機械のイメージ
・ブルース・ナウマン
・ジェニー・ホルツァー
・ ロバート・スミッソン→ノンサイトとサイトに置かれる鏡
・ダニエル・ビュラン→内部と外部にストライプが転写され、空間の内部/外部の二分法を相互浸透させる。
・ジェームス・タレル→光
・ ルネ・マグリッド→「象徴的な意味を求めるひとはイメージが本来備える詩情と神秘を捉え損なう。イメージはそのままのものとして見なければいけない。」
・ その他→ドナルド・ジャッド、リチャード・セラ、ウォルター・デ・マリア、マイケル・ハイザー、マン・レイ、ジェフ・クーンズ、ジョエル・シャピロ、ウォーホール
6、哲学者の影響
ジル・ドゥールーズ「すべては見せかけであり、見せかえはみずからのうちにに差異を含みつつ、そのつど反復として現れるほかはない。」
ミッシェル・フーコー「外挿法、価値移動、知の不連続」
ジャン・ボードリヤール「記号の再二重化」
7、建築思潮の影響
アーキグラム
ロバート・ヴェンチューリ「建築の多様性と複合性」
サイト/J・ワインズ