PETER ZUMTHOR THERME VALS

P.81~82
→ズントーがここでシークエンスについて説明しているが要約すると、まずホテルからスロープに従って建物の最も山側の控室に入る。そこで服を着替え、建物中央の空間を前面眼下にのぞむ石のギャラリーに出てくる。この石のギャラリーと下方への階段は建物の長辺方向に伸びていて、移動することによって石のブロックによってすぐには把握できない建物の全体像をちらちらとかいま見させる。つまりいったん始めに暗い親密な空間に入って出てくると、全体の構成をちらつかせ想像させる一段高い場所に出る。そこから長い階段を下っていくと石のブロックと水盤の迷路に出る。この迷路は各自が自分で道を選ぶことができ、さらに光に誘われて渓谷の方に向かうと休憩スペースがあり、石のフレームに切り取られた渓谷のピクチャーを見る。
→外部の水盤(温泉)の配置もよくよく平面を見ると、ミースのバルセロナ・パビリオンと似ている。建物の中心に位置するポツ窓のトップライトはトルコの浴場が根底にあるとのことだが、バルセロナ・パビリオンの光壁の位置に近いのではないか。実際建物の配置や光の演出上建物中心にくるのは誰が考えても妥当かもしれないが・・・。(井戸)

P.82
P.78~79のドローイングは「風車の原則」に基づいていて(建物の真ん中のブロックとその間の空間)、P.82のドローイングは「ジッパー(かみ合わせ)の原理」に基づいている(建物の渓谷側のブロックとその間の空間)。

→風車状の配置やかみ合わされた配置による流動的な空間というのは、ドイツ時代のミースの建築の特徴ではなかったか。(井戸)