Archi Review
第4回Dominique Perrault French National Librery
2003年6月21日 井戸健治
1、概要
外部に意味を暗示させる形や装飾を散りばめた建築の流行の時代(ポストモダン)に、一般にはモダニズム・ミニマリズム等に影響を受けたと見られるペローの案が選出される。
ボリュームを地下に埋め、本来であれば出現するはずだったボリュームを虚のボリュームとして出現させる。かつ自然を内部に包含させる。しかしその中には人が侵入できない。
2、自然(複数形)とは
現代の工業的な風景も自然→即物的
自然つまりあるがままの現在の風景・素材→全肯定的、中性的
中庭に人が入れない→神聖的(修道院の中庭、ラ・トゥーレットの中庭)
現代的な感覚(空間の色)に神秘性(古典)が入っている感覚?
3、現代アート(ミニマリスト・ランドアート)との関係
ミニマルアート
「即物性」、「インダストリアルなクオリティー」、「人間に近いスケール」
・ドナルド・ジャッド。
 中庭・同心の入れ子の円の平面、四角の平面
ランドアート
「美術館の中での対峙から、外部へ、周辺環境との関係、風景の捜査、風景の知覚方法のずらし」
「スケールの拡大と人為を超えた自然の侵食」
「もの自体への関心から、その写真や記録としての提示」
・ロバート・スミッソン
・ロバート・モリス
・リチャード・セラ
・リチャード・ロング
・メアリー・ミス「周辺/屋根/仕掛け」
・R・アーウィン「九つの空間/九つの木」
・R・フランシュナー「ボルチモア・プロジェクト」
・クリスト→ラッピング
フランス国立図書館の場合
ヒューマンスケールを超えた大きさでのミニマル・アート、人が内部にいる仮想のボリューム
こ建築を構築するという考えからはなれ、都市に箱を置くという視点。
ミニマルアートでは否定の対象であった台座つまり基壇の採用→古典的
4、ルイス・カーンの影響
・ユダヤ600万犠牲者追悼碑(初期案1966年)
 唯一のガラス主体のプロジェクト、基壇の上に鋳物ガラス(ガラスの塊)→ガラスブロック
・バスハウスの構成→中庭の構成と囲む空間
・ソーク生物研究所の中庭
 同心の入れ子の構成
 幾何学的平面
5、ミース・ファン・デル・ローエの影響
・ボリュームと空間(ヴォイド)、実の空間と虚の空間を同等に考える。
 例:シーグラムビル、コンベンション・ホール
・ガラスの摩天楼→ガラスによるボリュームの消去と風景の壁面へのコラージュ
・トラス構造のフラット屋根と大スパン
 コンベンション・ホール→オリンピック・ヴェロードーム&水泳競技場
・ミースのカーテンの空間→ペローではカーテンがステンレスのファブリックに
 ミース&リリー・ライヒ「ベルベット&シルクカフェ1927年
 →マンサナーレス川公園の総合スポーツセンター
6、古典的⇔現代的
  古典的→台座・基壇がある。軸線が通っている。ある意味権威的。
  非古典的→物語的装飾・隠喩などない。正面がない。虚の建築。
7、他の建築家のコンペ案
・ペロー案
 →虚のボリューム(機能はない。)は天空に開放されている、境界は心の中にしか存在しない。
・コールハース案
 →ボリュームの中の虚のボリューム、建築としての実体として虚のボリューム(機能を含む)が存在
参考:コルビジュエのラ・トゥーレットの中庭は、虚のボリュームの中に通路としてのボリュームが交差
8、ペローの建築的手法
・自然的素材と建築的素材は同等に扱われる。
 自然(樹木)のなかにガラスの箱、ガラス・メタルの箱の中に自然(樹木)
 例:コロニーハーフェン、
・大地へのガラスの空間の埋設
 例:ユジノール・サシロール会議場、国立国会図書館関西館
・同心の相似形の四角の入れ子の平面
 ルイス・カーン、ドナルド・ジャッドの影響
・垂直よりも水平に伸びる平面(主導線軸に対して部屋が連結される。枝に葉が付くように)用に
・ボックスをランダムにスタッキングする方向へ
・さらにそのランダムなスタッキングをメッシュでラッピング
 →崩れかけたスタッキング(ジャッドのスタッキングの崩し?)をラッピング(クリスト)
形態は機能に従わない。形態は機能を含むもの
コラージュ、包み込み、寸断、納めること、包含、消去という手法として建築・自然を操作する