Archi Review 第17回
ルイス・カーン「キンベル美術館」
2004年8月21日 井戸健治
1、ルイス・カーンの代表作
・イエール大学アート・ギャラリー(1951-53年)
・ バス・ハウス(1954-59年)
・ ペンシルベニア大学・リチャーズ医学研究棟(1957-65年)
・ ソーク生物学研究所(1959-65年)
・ ファースト・ユニタリアン教会および付属学校(1959-69年)
・ エシェリック邸(1959-61年)
・ ブリン・モア大学・寄宿舎(1960-65年)
・ フィッシャー邸(1960-67年)
・ フィリップ・エクセター・アカデミー図書館(1962-74年)
・ インド経営大学(1962-74年)
・ バングラデシュ国会議事堂(1962-74年)
・ イエール大学・英国美術研究センター(1969-74年)
・ キンベル美術館(1966-72年)
 比較:コルビジュエのサラバイ邸(1951-55年)やグリーン・ファクトリー(1944年)ノコギリ屋根
2、ルイス・カーンの言葉
「空間は、それがいかにつくられているかの証拠が見えない限り空間ではない。」
「構造は光をつくり出すものである。なぜなら構造は空間を互いに分離し、それによって光が与えられるから である。」
「一日の時間を知る快適な感覚を与えるだろう」
「建築におけるモニュメンタリティーは、ある質として定義されるだろう。それはひとつの建物に固有の精神 的な質であり、付け加えたり変更したりできない、その建物の永遠の感情を伝えるものである。」
「過去におけるモニュメンタルな建造物は偉大さについての共通の特質を持っており、我々の未来の建物はある 意味ではそれに頼らなければならないのである。」
「モダンというものは存在しない。なぜならすべての物は建築の中に存在する建築性に属しており、その力を 保持しているからである。」
「イタリアの建築を我々の建物についての知識と必要性に関連を持つように翻訳することである。私は復元 (という類いの翻訳)についてはほとんど意を払わないが、出発点として、周囲の建物によって修正される 空間の想像に対する各人の取り組み方を研究することに関しては、おおいに個人的な価値を認めている。」
「私は、我々がデザインについて語っている時、我々はオーダーについて語っているのであると信じている。 私は、デザインは状況的なものであると思う。私はオーダーというものを我々がその局面を発見するような ものであると考えている。」
「ドームによって形成され、壁で分割された空間は元と同じ空間ではない。・・・部屋は建設された実在物、 あるいは建設のシステムの秩序づけられた区分でなければならない。」
「施設のプログラムをただ受け取るだけではなく、その施設自体が妥当であることが認識できる何かを発展 させるよう試みることが、建築家の義務である。」
「1枚の壁は外側とは異なる内側をもっているのだから・・・我々は、今や外側の壁を内側の壁から分離する ことができる・・・そして我々は、人がその間を歩くことのできる空間を創り出すというリアライゼーション の地点まで到達したのである。堅牢な石の壁ではそうすることはできないのだ。」
「個人的な感情が高まって宗教となるとき(ある特定の宗教ではなく、宗教の本質という意味で)、そして 思考が哲学と結びつく時、心はリアライゼーションへと開かれる。このリアライゼーションが、言うなれば、 ある特定の建築空間の存在意志なのかもしれない。リアライゼーションとは、心と魂の緊密な和合における、 思考と感情の融合である。それが、あるものが在らんと欲しているものの源である。」
「フォームは形も寸法も持たない。・・・フォームとは“what”であり、デザインとは“how”である。 フォームは個人に属するものではない。デザインは、設計者のものである。デザインとは状況に応じた行為 である。・・・フォームとは状況と何ら関係がない。」
「ある学校、あるいはある特定のデザインは、その制度(インスティチューション)が我々に期待するもの である。しかし学校というもの、精神の学校、すなわち存在意志の本質は、建築家が自分のデザインの中で 示すべきものである。たとえそのデザインが予算に応じるものでなくても、彼はそうしなければならないの である。」
「部屋は建築のはじまり(ビギニング)である。それは心の中の場所である。大きさ、構造、光と共に部屋 にいるあなたは、人間が提案し創り出すものすべてが生活になっていくということを認識しながら、その部屋 の性質や精神的雰囲気に反応する。部屋の構造は部屋自身に明白でなければならない。私は構造が光を与える ものであると信じる。」
「これからあろうものは、常にこれまであったものである。」
「窓は、他人といる時でさえ、ひとりになりたいと望む学生に対応するように、個別につくられるべきである。」