Archi Review 第13回
アルド・ロッシ「世界劇場」
2004年4月3日 井戸健治
1、「都市の建築」、「アルド・ロッシ自伝」
(素朴)機能主義批判
文脈主義批判、地域主義批判→環境概念、歴史的都市を保存することに対する批判
手作りの都市、人工的創成物としての建築で構成される人工的創成物としての都市
偉大な建築的成果は堆積物、地層
空間・地理的規模・形態・歴史の新旧・場所、時間、記憶、合理性、類推、装置、出来事、生の装置、死の装置、劇場、詩的、
私的、ドローイング、廃虚、固有性
2、類推的都市、類推的建築
《論理的》思考→話法の形をとって外界に向けられた言葉の中で表現される。「言葉で考える」こと。
《類推的》思考→感じられはするが未だ実在せず、想像されはするが未だ静寂のなかにある。それは話法ではなく、むしろ過去の主題に関する瞑想つまりある内的独白である。それは言葉では言い表せない、非言語的な思考である。太古的で明示できず、また、実際言葉で表現できない。
カナレットのパラーディオの建築群による空想的都市風景
3、H&deMへの影響
「隠れた自然の幾何学」より
「都市のイメージや、建築物や建築素材のイメージ、アスファルトの匂いや、排気ガスの匂い、雨の匂いなどを私たちは自らの内に抱え込んでしまっています。・・・心象的類推作用を利用し、それらを解析し建築的実在へと再構成すること、これが我々の仕事の中心をなすテーマです。」
→ロッシの場合は近代建築が持っていた理念や規範のようなものに対して、個人的な記憶(集団的な記憶)と連結され限られた(絞り込まれた)古典的な建築言語の原初的(単純な)形態の集積により、人工的創成物を構成する建築を創るのに対し、H&deMは現代の「場所」の観察を通して、「場所」を構成しているさまざまな交差する編み目のような要素の中から、ある要素を「拡声器を使うかのように」肥大化させ(異化させ)建築的実在へと再構成する。
「リコラ社の倉庫は、建築内部の貯蔵庫からの類推です。・・・建物の外的構造は、建物の内的構造と呼応している。・・・積み上げられた堆積という観念・・・木質セメント板の繊細な構造との対比によって観察者の岩盤に対する認識が高められ・・・かつて採掘された石灰岩はこうしてあらためて工場の一部となった」
「伝統的家屋の平面計画は単純で明快です。・・・機能に従って分離していく「分割」のプロセスではなく、社会的、機能的、空間的、構築的全体、つまり文字通り統一された建築をつくる「集積」のプロセス。」
→ロッシも「都市の建築」で、人工的創成物としての都市(すなわち建築)は、空間・時間・地理的規模・形態・歴史の新旧・記憶の「集積」と捉えていた。「自然、この計り知れぬ完全性の内側で諸関係をつかさどっている「システム」の複雑性のことです。そして芸術や社会という領域で行われている、この複雑性に対する類推に我々は興味を持っています。」
→H&deMの思想形成はアルド・ロッシとヨーゼフ・ボイスによる。
ジャック・ヘルツォーグ来日インタビューより
「あなた方が考える建築形式(ビルディング・タイプ)について概念としてはすでにあるものなのですか?」という質問に対して
「大きいものでも、小さいものでも、中庭を持つ建物でも何でもつくれます。もちろんそういうものをミックスしたり癒合させたりすることもできます・・・あなたはまだ建築形式というものを信じていますか。・・・ときとしてきわめてはっきりとした形式(タイプ)を扱うことはあるわけですからね。でもそれはアルド・ロッシがいうほど明確なわけではない。ロッシは私の先生ですが、彼は、これこれは中庭だ、小さなヴィラだと思い込んでいました。ときにははっきりとした形式(タイプ)を扱うことがよいこともある。こういう形式の世界が永久に終わったとは思いません。・・・」
→ロッシとの影響と相違
4、アメリカ
ニューヨークの都市
IAUS(アイゼンマン初代ディレクター)にいたコールハースに影響あたえたのではないか。
「錯乱のニューヨーク」へ変質。
「都市の建築」の中で、「機能主義の中で最重要なのが、商業の機能」
→コールハースの「ショッピング」
類推的都市のドローング→アイゼンマン「ベルリンの集合住宅」の既存の都市にコラージュされるグリッド
5、アルド・ロッシの建築における素材
アルテ・ポーヴォラ 貧しい材料による芸術
6、ジョルジュ・デ・キリコ
7、ジョゼッペ・テラーニ
8、ドナルド・ジャッド
マーファの改修の窓と同じ形状の窓