Archi Review
第6回 Pompidou Center Piano&Rogers
2003年8月9日 井戸健治
1、 ポンピドゥーセンター
計画案の変遷
Rのついた塊(パネルorガラス)がフレームの後ろにある。
完成後言われている根拠とは違う発想の原点がある。配管もない。1等に選ばれてからの周囲の批判に対して別の根拠に移行していったのではないか。実施案の方がラディカル、つまり意志と表現=構造が明確に。
鉄骨の骨組みを被服しないように柱の中に水を充填する仕組み、構造=配管
2、 柱・梁と建築のボリュームの関係
石で囲われた街並みと対照的にと言われますが、、、
ゴシック建築との構造上の相似→フライングバットレスが片持ち張り+ブレースの部分に相当
コルビジュエ「ドミノ・システム」→柱とスラブのシステム
ミース「バルセロナ・パビリオン」「チューゲントハット邸」→柱と外壁・内壁が分離
ミース「ファンズワース邸」→柱が外部に
ミース「IITクラウンホール」→柱が外部に梁も外部に(大スパンの無柱空間のため梁背が大きくなる。)
ミース「国立ナショナルギャラリー」柱が外部に、梁=屋根スラブに
ミース「コンベンションホール」→外皮が鳥籠状のブレース構造に
ポンピドゥー・センター→外部鳥籠+梁、門形フレームの連続ともとれる。
ピアノ「IBM巡回パビリオン」→連続するパネル・アーチの連続
ロジャース「インモス・マイクロプロセッサー工場」→柱と外壁の関係。柱・梁を外部に
ドミニク・ペロー「ベルリエール工業館」→ガラスのファサードの内部に配管
内部空間はミースのコンサートホールの実現化
3、 ハイテックスタイル?
建築においては、形態は思想・哲学を表す一つの手段
「建築とは素材の要素を寄せ集めて組み立てること」⇔「光の中のマッスの見事な演出」(モダニズム)
時代・5月革命→市民に、都市に開かれた建物、これを表明するために、アーキグラムのイメージが利用される。構造は外部に、カーテンウォールの中に広大な無柱空間、展示壁は展覧会毎に作品にあわせて構成される。つまり、絶えず更新される都市そのものが内包されるという筋書き→しかしこれはあくまでフランスという国家が用意した箱の中でのお話で、アメリカに渡ったアートの中心を戻そうという目論みもある。
広場にてパースペクティブをとりそのファサードに建築の思想が表明される。論理構造としては非常に古典的である。⇔対してドミニクペロー「国立国会図書館」はパースペクティブをとる構成でなく、ミニマリズムの客体(オブジェクト)と観察者(利用者)の関係としての構築されている。
建築の意図と構造が同時に存在できるという意味では、安藤忠雄「住吉の長屋」との類似がいえるのかもしれない。
つまり、意匠を決定する思想(意図)と構造との距離の問題である。
4、 アーキグラム
モダニズム→建築の本来のモダニズムの意味にポンピドゥ・センターは含まれるのでは
インターナショナル・スタイル→スタイル(ファッション)メディア布教用語?
⇔アーキグラム(建築界のビートルズ)
5、 オブ・アラップとピーター・ライス
物が作られている根拠に正確につくる。構造上の力の伝わり方がそのまま形にあらわれるように、つまり、嘘がない構造=意匠とすること。どんな工法でできたかということを明白にすること。
6、 ジャン・プルーべ
ゲルバレット梁の形態とプルーベの接合部の近似
7、 2人の展開
A、 レンゾ・ピアノ(一見地域的に見える、木を多用するからだとはいいきれないが。)
「ポンピドゥーセンター」→設備と空間を反転させる
「メニル・コレクション美術館」、「バイエラー財団美術館」天井からの光、屋根
←キンベル美術館(ルイス・カーン)の影響
「プロメテオ」オペラ・インスタレーション→観客と演奏者を反転させる
「IBM巡回展示パビリオン」→仮設、移動
B、リチャード・ロジャース
ルイス・カーンの「マスターとサーヴァント」の空間からディテールまでの徹底化、思想としてのハイテックで、過剰なデコラティブ・ハイテックを非難(ジャン・ヌーベルのようなフレンチ・テクも含まれるか?)
「PAテクノロジィ・ケンブリッジ研究所」→内部に梁柱がグリッド3×3グリッドが基準←カーンの影響
「ロイズ・オブ・ロンドン」←「マスターとサーヴァント」の空間からディテールまでの徹底
設備スペース←ルイス・カーン「イエール大学アート・ギャラリー」
8、 現代アートとの距離
現代アートを国家が管理することに反発←ゴードン・マッタ・クラーク「円錐の交差」
周囲の整備に対し、残った最終の建物に4Mの円をあける。
9、一品生産と大量生産の狭間での思考
現在はプラスターボードの張りぼて+既製品の組み合わせで空間をつくる。
→良く言えば、光のマッスで構成された空間に既製品が選択された空間→これでいいのか?
しかし、部材で構成される空間をつくる場合、選択される材料は一品生産か大量生産のものか?
ジャン・プルーベ 社会システム、生産システムとの関係
←日本では住宅産業と大衆の共同幻想としての「見かけの価値」に押しつぶされるしかないのか?
ピアノ→一品生産
ロジャース→大量生産の一部変更(つまり一品生産)