Archi Review
妹島和世
2003年5月24日 井戸健治
「再春館女子寮」
A、再春館女子寮の位置づけ
1)造形的時期(ふわふわ、ひらりひらり)
伊東豊雄の影響(軽快な屋根、シルバーハット)、平面的
作品例:プラットフォーム・、・、・
2)空間的構成時期(再春館製薬女子寮が転機)
3次元のボリュームの中での構成(廊下がない)
外観は同じわりのガラス、アルミパネルのミニマルなボリューム
(内部の構成を際立たすためか?)
内部は空間に浮かぶボリュームと導線のチューブ
グランドラインを切り込み(掘り込み)、ガラスの層の上に不透明なボリュームを浮かばせる。
作品例:再春館製薬女子寮、N-House、パチンコパーラー・、Y-House(mvrdvのダブルハウスへ影響?)、調布駅前交番、M-House、那須野ヶ原ハーモニーホール公開設計競技案、中原中也記念館公開設計競技案
3) 平面構成
3-1)短冊あるいは単なる塊
     作品例:岐阜北方集合住宅、O-資料館、世界都市博覧会・消警センター
3-2)中心となる図形(四角あるは丸)と突起物(回廊がまわる)
     作品例:森の別荘、熊野古道なかへち美術館、マルチメディア工房
3-3)箱の連続
     作品例:スタッドシアター、金沢現代美術館
B、妹島和世の建築の意図
1)古典的な建築の構成の問い直し
空間のヒエラルキーを疑う
正面がない
全体がない(延々と続く、たまたまその形になったような…)
前提条件のない建築(ただしゲームとしてのルールはある、既存の価値観、既存の建築計画上のヒエラルキー、部屋の広さ、天井高さの問い直し)
→廊下の意味、部屋の意味、それらの繋がりの問い直し
近代以前の日本の伝統建築(武家屋敷、農家)等との近似性
箱が続く、最短の廊下で結ぶのでなく回廊によって囲われる
2)1)を現実化するために使用される手法
 2―1)包含(入れ子):ボリュームの中のボリューム
 2―2)連結:本体と突起物ユニット(ちりとり型、風船型)が飛び出す。
       作品例:Y-Houseのトイレ、マルチメディア工房、森の別荘
 2-3)上下運動と空間の迷宮化
    2層目からの進入とその進入部分が空中
    典型的な廊下がない、導線にあたる空間がない。
    大きな空間から直接各室へ
       作品例:再春館製薬女子寮、Y-House、M-House、パチンコパーラー・
2-4)規則とランダム
2-5)平面における平行分割←コールハースのラ・ヴィレット公園計画
       作品例:N-House、M-House
3)その他形態的な特徴
 切断面としてみせる、仕上げに厚みがあるように見せない。
 作品例:熊野古道なかへち美術館の小口、Y-Houseのファサード、岐阜北方集合住宅の小口
 湾曲する床
 作品例:マルチメディア工房、パチンコパーラー・
C、他の建築家の影響
 1)伊東豊雄の影響
   プラットフォーム・、・、・←シルバーハット
   森の別荘←中野本町の家
 2)菊竹清訓のスカイハウスの影響
   マルチメディア工房、S-House、熊野古道なかへち美術館
 3)レム・コールハース
   N-House←コールハースのラビレット公園
   マルチメディア工房←クンストハル
   森の別荘の湾曲するキッチン←湾曲するバルセロナ・パビリオン
 4)アルネ・ヤコブセンとの比較
   森の別荘←未来の住居